野田マップ 「キャラクター」

録画しておいたWOWOW放送の「キャラクター」を見ました。
まったく何の予備知識もなく見たもんで、徐々に“あの”事件についての話だと気付いて、どーんと重い気分になりました。しかし、ものすんごく訴えかけられる、心に響く作品でした。主演の女優さん、ものすごい熱演ですね。特にラストは、あまりの彼女の熱演に、知らぬ間に涙がこぼれました。これまで、彼女のことを役者としては特に認識していなかったのだけれども、彼女は舞台が(しかも野田作品が)似合う方なのだなーとちょっと驚きました。
 
ワタシ的に、野田氏の芝居というのは基本、ちょっと敷居が高いというか・・。崇高だったり壮大だったりするテーマを、日本古来の文学の妙みたいなものを上手く取り入れて、どこまでも緻密で、なのにわかりやすくて。しかも社会派。芝居の端々に知性が溢れ出ているというか(女装したりっていうベタなオモシロは敢えて、我々レベルまで門戸を開けてくれているように思えてしまう)。
そんなんでワタシ的には、どちらかというと芝居を楽しむというよりはひたすら感嘆してしまうのです。(勝手なイメージとしては野田氏は江戸時代辺りの天才文学者みたいな感じ。)ワタシが芝居を観に行く理由とは合致しないというか。好きなジャンルの芝居ではないというか、ね。
ただ、ものすごくおもしろいと思うし、何かを発信する(できる)立場にいる人が、こういうテーマをわかりやすく世の中に投げかけていくことは絶対に必要だと思うんです、はい。なので、素晴らしいな、と思っているんです、心の奥底では。
今作は特にその辺り、色濃く感じるわけです。こういう芝居が存在することが素晴らしいと。しかもそれがとてもポピュラーであることが素晴らしいと。・・ただ自分が劇場に行ったら間違いなくどーんと堕ちてしまうだろうな。しばらく立ち直れないだろうなとも思うわけで・・。
 
(なんか文章がひねくれてますけど、褒めてるんです・・。そうは見えないかもしれないけど。)