夜中に犬に起こった奇妙な事件 まとめ

GWですな。ぼやぼやしてたらあっという間に時がたって、大好きだった「夜中に犬に起こった奇妙な事件」もすっかり千秋楽を迎えて閉幕しておりました。そんなわけで忘れる前に総評。(というか、自分の中で終わらせるために、です。)
始まる前は、実はそこまで期待していなかった本作。情報解禁から開幕までの期間の短さ、他劇場でフライヤーないし、そして物販の内容などから、もしかしてこれはワタシの管轄でない方の・・?と勘ぐっていました。演出の方も(これまでの作品を見るにつけ)あまり興味をひかれなかったし、内容を日本に置き換えてっていうのも若干懐疑的でした。
しかし、蓋を開けてみれば。これまでの剛くん作品の中で、ワタシ的に1,2を争うお気に入りとなったのでした。
しかも今回に関しては剛くんの芝居云々より、あの演出がワタシにはどストライク。どーんとハマりました。全体を通して優しく(それはきっと、幸人を大切に思い見守る人たちの存在。そしてあのノスタルジーを誘うピアノの音色)、雨後の晴れ間のように清々しく、何よりも希望に満ちてきらきらと輝いていて。演者たちの軽やかな動きや、ピアノの音の変化で鮮やかに行われる場面転換の素晴らしさ。どれもこれも愛おしい。日本に置き換えたのはもちろん、学校での演劇という設定、先生の朗読という形を借りてのストーリー進行も効果的でした。
そして、幸人という少年には、あんなにも美しく輝かしい可能性が詰まっているということを言葉ではなく、演者の動きで見事に表現しているのがすばらしかった。それがきっとこの芝居を貫く希望や瑞々しさ、そして心地の良い感動に繋がっていたのだなーと思う。剛くんの身体的特徴や能力を存分に生かしての演出、これがとにかく秀逸でした。最初に観たときから、あぁこの役は剛くんにしかできないなーと感じたのでした。
そしてカーテンコールのあの粋な演出。幸人のことを大事に思う素敵な人たちに囲まれて、大好きな数式を嬉々としてみんなに教える幸人。大好きなメタルカラーの衣装も、ホントに学芸会用に先生や父兄が作ったようなチープな感じがまたリアルでいいじゃないですか。ワタシ的にはあそこも感動ポイントでした。あー幸人よかったなーとか思ったりして。最後に「おしまい」って幸人の字で出るところとかもいいですよね。
幸人のような人を、傍目から見て勝手に同情したり気の毒がったりしてしまいがちだけど、ホントは彼は誰よりもキラキラと美しい世界で希望に溢れて生きているのだなーと。彼に合わない社会が存在するだけで、彼自身はあんなにも豊かで生き生きとしているのだなー・・。
もうホントに全編通して何から何まで愛おしい。あぁいい作品だった。

たとえば、何の気なしに見た映画が小作ながら思いがけずものすごく心に残るいい作品だった時のような、なんとも爽快な心地よい幸せを感じました。

ワタシが常々感じていることですが、剛くんはマニアックな、そしてユニークな(本来の意味での)アプローチの芝居をする人であるのに、且つメインストリームに居続ける人である、ということが彼の魅力であり、武器であると思うのだけど、今回はそこの部分を上手く活かした演出でホントに彼でなくては成立しない役であったなーと唸らされたわけです。

そういえば、パンフレットの表紙はなぜ茶色なのか・・?ノートと同じ赤が良かったのになー。