「母を逃がす」

ようやく、「母を逃がす」の感想。23日ソワレを観て来ました。初演を見てないので新鮮な気持ちで。祝日ということもあってか、通路も座布団席もぎっちり満員。ワタシの席はなかなか見やすいいい席でした。以下、ネタバレ。
 
東北の農業コミューンを舞台に、そこでその場所だけを自分たちの世界としその場所でしか生きていくことのできない人達のひたすら滑稽でひたすら哀しい日常。そこは歪んだ愛や歪んだ欲望や歪んだ羨望や歪んだ憎しみに満ちみちた濃密な、しかし決して交わらない感情の吹き溜まりで。悪だとか後悔だとか懺悔だとか、そんなものすら超越して諦めて、それでもその場所で生きていかなくてはいけない、その姿勢になぜだかうっすら希望みたいなものも見えたりして。人間とは、生きるとは、なんとも滑稽でなんとも哀しい・・。なんてことをつらつらと想ってしまう、松尾ワールド炸裂の舞台でした。見てから時間が経つほどにじわじわと染みてきました。
劣等感に苛まれた小さな自分が営む虚栄で固めた綻びだらけの世界、それが生きること全てであり、ただひたすら続けていくことだけが重要で。実はそれが狂気に満ちた、実際の世の中からははみ出た存在であることに気付かないフリをして。だけどある時あるタイミングに乗じて母を逃がそうとする次男。母はすべてわかって、でもちょっとだけ期待して。・・だけどやっぱり。なにがあってもこの世界で生きていくのがこの人達の運命なのだなーと、この家の血がそうさせるのだなーと・・。人は皆、ある意味そうであるのだなーと・・。うんうんと噛みしめました。休憩ナシあっさり短め、潔く面白かったです。
とにもかくにも出演者みなさんが大人計画ってのが最高に贅沢。もう大満足。
母役・池津祥子さん、とても似合ってました。サダヲ・カヲル兄弟、クドカン・良々従兄弟、さすが見ごたえあり。公園くんの舞台での悪い役は最高にかっこよいですね。一本さん、素敵でした。少路くんの女性経理主任役(初演では伊勢さん?)もなかなか・・でした。
で、最後は盛装した吐夢&紙(劇中で、志半ばで○されてしまう無念コンビ)司会による何かの授賞式のようなカーテンコール。一人ずつ呼び込む際に吐夢さんの一言コメント(昨日の休演日に何してたかネタ多し)付き。最後に松尾ちゃん、「♪いちばーんきれいなわたしをー・・」と唄って(その後を全員が復唱)終了。大人計画の役者さんがことごとくツボなワタシには大満足でした。(松尾ちゃん手書きによる人物相関図もナイスです。)