印獣 ああ言えば女優、こう言えば大女優。

昨日パルコ劇場にて「印獣」観てきました。「鈍獣」以来のねずみの三銃士、加えて三田佳子って。出演者だけで期待が膨らむじゃないですか。(以下、ネタバレあり)

冒頭、編集者が作家を車で人里離れた大女優のお屋敷へ連れて行くシーン。キキーって方向を変えると別の作家が座ってるという演出が見事で(映像でシーンがパッパッと変わるような)、それだけでいきなりテンション上がりました。わくわくしました。
その後の、作家3人だけで別荘に入り込み地下に落ちるまで、タイトルバック、そしてキラキッラの大女優登場シーン、その大女優のラップ!!!辺りまで、息もつかせないインパクト特大シーンの連続。一気に作品世界にひき込まれました。ワタシ的にはこの冒頭30分だけでもう大満足。
なぜ自分が選ばれたのかわからないまま、誰も知らない大女優の半生を小説にするために屋敷に監禁された作家達、初めは全く無関係だと思われた大女優との関係がストーリーが進むに連れて明らかになっていく、これは大女優による復讐なのだろうか。猜疑心や恐怖や強迫観念から徐々に狂気を帯びてくる彼らの言動に段々と背筋が寒くなってくる・・。
休憩挟んで3時間弱、どっぷりあの世界観に浸りました。笑いました。爆笑しました。大爆笑しました(カイセンジャー・サーモンがお気に入り)。そして、ちょっぴり感動しました。
なによりも圧倒されました、大女優に。あの三田佳子があんなことやってこんなことやってそんなことまで・・。しかし何をやっても大女優なんです。大女優魂が、大女優オーラが、大女優の威厳が、大女優の年輪が・・。圧巻です。これは大女優ありきの、大女優のための、壮大なコメディだなーと。(サブタイトルが物語ってますね)
娘の死後に初めて親子を感じた・・のくだり、思わず涙が出そうになりました・・けど、あの大女優はそれすらも取引の材料に出来るような堂々とした浅ましさがある。したたかさがある。
そもそも作家達に対する恨みも大の大人が何十年も引きずるようなものじゃない。自分の不運がヒトのせいだと、ホントはもっと幸せになってるはずだと都合のいいように信じ込んでいる安い勘違い大女優なのかもしれない。だけど。あのしたたかで、方向は違えどまっすぐに突き進むエネルギーが、なぜだかとっても痛快なのでした。
ねずみの三銃士、さすがです。大女優に見劣りしませんでした。そこかしこに鈍獣的な匂いも残しつつ(欲を言えばKIOSKシーン、おばちゃん達がいたらなー・・と。)、新しいホラーコメディ、堪能しました。