ヒメアノ~ル 感想

日舞台挨拶に続き2回目「ヒメアノ~ル」、昨日レイトショーで見てきました。以下ネタバレありの感想。

基本、邦画見ないんでこの監督の作品も初めて見ました。原作も全く知りません。
公開前から宣伝的な紹介記事でもレビューでも怖い・エグイ・途中退出続出だのと煽ってましたが、実際ワタシ的には怖さやグロさで目をそらすとかは正直全くなかったです。(タランティーノ大好物なヒトなんで参考にならないかもしれませんが。)グロよりはあのロリ系顔の女優さんの大胆ラブシーンの方にちょっと驚きました。
初見時。作品としておもしろい、良くできた映画だなーと思った。それほど多くない登場人物がそれぞれ皆きちんとハマっている。噂のタイトルバックの辺りもやはりうまい演出だなーと思った。
でもなんだか鑑賞直後はそこまでは盛り上がらず・・という感じで映画館を後にしたのです。ところが。そのあと帰り道も寝る前も次の日も、最後のあのシーンを中心に色んなシーンが頭の中をぐるぐると渦巻いている。気付くと映画のことを考えている。じわじわと心に沁みてくる。がさがさとした余韻で気持ちが粟立つ感じ。で、また見たくなって、2回目。なんでしょうね。あの何とも言えない感覚がまた欲しくなる中毒性のある映画です。
平和な日常に入り込むサイコパス、崩れるしあわせな日常・・という導入部。その恐怖の殺人者森田が誇張された狂人でなく、その辺にいそうな底辺臭漂う無教養の冴えない男なのがリアル。そして弱そうなのもいい。たばこ注意された時のやりとりとか、パチンコ帰りにカツアゲされるエピソードとか、森田の人となりを説明するのにうまいこと効いてました。一連の殺人の始まりが、自分を殺しにやってきた奴らってのもよかった。そして自らの手で金ヅルと棲み家を失うってのも浅慮な感じがよく出てた。この被害者のカップルも含め、岡田や安藤やユカちゃんも、森田に限らず登場人物が何か闇を抱えてる、一歩間違えたら誰もがそっち側にいっちゃいそうな危うさがあるのがいいですね。
一番強烈だったのは、カレーのシーン。帰ってきた主人を凝視しながら「やべぇ」でも「めんどくせーなー」でもない虚ろな表情で咀嚼し続ける森田。そしてフツーに歩いて包丁取りに行ってフツーに歩いて戻ってきて、でも相手が逃げたら一転してものすごいスピードで追いかける。あの緩慢な感じからの変貌が森田の異様さを描き切っていて秀逸。
そしてやはりラスト。車に乗ってからエンドロールまで、思い出しても鳥肌が立ちます。原作知らないんで、あのラストにはやはり救いを感じるし、ノスタルジーも相まってなんだかちょっと心の中に温かいものも生まれる感じ。
なにより余計な説明を省いて無駄のない演出ですべてを見せてタイトにまとめているところが素晴らしい。
うん、いい映画だなと。
そして森田剛くん、以前このブログにも書きましたが、剛くんは「カリフォルニア」のブラピのような役が絶対に似合うと思っていたので、この役はホントにおそろしくハマってる。いつも思うけどやり過ぎない肩の力の抜けた芝居がすばらしい!わかっちゃいたけどすげー役者だーと改めて。