金閣寺 in NY ~客席での攻防編~

金閣寺の客席でのワタシの体験。客席ではこんな攻防が繰り広げられてました。いやいや、アメリカだなーという話。芝居には直接関係ないんで興味ない方はスルーしてください。(芝居の感想はこちら→ http://blogs.yahoo.co.jp/spacefish55/53838021.html
 
ある日のワタシの席は最前列センターブロック下手側通路脇。
入場の際、もぎりのおばちゃんがワタシとツレのチケットを見るなりこともなげに「あぁ、あんたの席は訳あって1列後ろになったから」と。「えー!なんでー?一番前だから買ったのにー!」と一応文句つけてみるも、「知らないわよ。そう言われてるの。前過ぎて見難いからじゃない?」とテキトーな答え。謝るでもなく。ムキーッ。
ところが。席まで案内されて「なるほどー」と納得。ワタシが買った席は、金閣寺を見た人ならわかる、例の最後の溝口の“あの席”だったわけです。間違えて売っちゃったらしい。アメリカらしいといえばらしい。で、1つ後ろの席に座ってくれと。「じゃあこの席には誰も座らないのね?」と念を押して了承。と同時に、剛くんをこんな至近距離で・・と急に緊張。
芝居が始まって、こんな近くで見れてしあわせーと舞台に集中。あっという間に一幕終了。
休憩もそろそろ終わりという頃になって、アメリカ人おばさま2人組が後ろの方から、べらべらしゃべりながら例の席へ。前の様子でも見に来たのかと思いきや、出演者が出てきてもまだ座ってる。あ、剛くん出てきた。電気消えた。あれ?戻らないのかなー。おばさまたちどっかり座ったまま。字幕が見えにくいとか言ってる。足投げ出してる・・。でもきっと係の人が速攻で注意しに来るに違いない。ワタシなんて有無を言わさず席変えられたくらいなんだから。・・と思ってたのに来る気配がない。一向に。
どうしよう、このままでは溝口が座る席がない!と正義感に駆られ、背後からおばさまにこそっと(芝居中ですから)声を掛ける。どうやって説明しようかなー、溝口が・・っていうのもワタシがそう確信してるだけで、日本と演出違ってるかもしれないしなーと迷いつつ。「あのー。ここ元々私の席でー・・」とチケットを出して見せた途端、「Oh,Sooooryyyy」と素早く通路を挟んだ隣のブロックの空いた席に移動するおばさま。悪気はないらしい。しかしあくまでも自分のホントの席には戻る気はない様子。
とりあえずよかったよかったと胸をなでおろし、数十分。するとなぜかまた戻ってくるおばさま。そろそろ芝居は佳境なのに。もーー、なんなの?と若干呆れ気味に「ねぇねぇ」と肩を叩くと、相手もなぜかキレ気味に「だって席空けたのにあなた座らないじゃない!」と。
本気で呆れましたね。そもそも自分の席じゃないんだから。空いてるからってなぜ座る?しかもなぜキレる?もーせっかくの芝居に集中できないよー。こんな大きなおばさんがうろうろしてたら周りの人も気が散るだろうよー。
ぐっと我慢しておばさんの耳元で説明しました。「ホントはワタシの席だったんだけど、演出の都合で移動させられたの。ここ空席にしとかなきゃいけないみたいよー」と遠まわしに。するとおばさん、振り返ってワタシの顔をじっと見て「そんなわけないじゃない。」と。まるでワタシがテキトーに作り話してるみたいな言い方。
こりゃだめだ、と思ったワタシは「彼が座るのよ、最後に」と舞台上の溝口を指差して言ってやりました。するとおばさん、目を丸くして再度逃げるように通路向こうの席へ。今度はおとなしく最後までその席に居てくれました。・・・ふぅー。
溝口が無事、席に座って(剛くんの後頭部をあんなに間近で・・あぁぁ)、拍手と共に舞台上に駆け上がった途端、おばさま戻ってきました。すばらしい根性。そんなにこの席で見たいのか・・。多くの剛くんファン垂涎の、彼の座りたてほやほやの席に、おばさんおかまいなしにどっかり座りました。でも舞台には熱烈な拍手を送ってました。楽しんだようです・・。何よりです・・・。
さらに。カーテンコールも終わって、帰る段になって、おばさんがゲラゲラ笑いながらワタシの腕を掴み、「もう、おっかしいのよー・・」と事の顛末を周りの人達(おそらく知らない人)に報告。ワタシ的に、それまでおばさんに対してちょっとイラッと来てたのだけど、あまりの悪意のなさに逆に楽しくなっちゃいました。しばらくお話の輪に加わってからバイバイーと帰ってきました。
日本でこんなことあったらあの非常識な人のせいでーと終わってからもずーっとイライラし続けただろうけど、人柄なのか国柄なのか、なんだか楽しげないい思い出になりました。小さいことでイライラしててはいかんなーと反省したりもして。
アメリカならではの、こんな体験しましたというお話でした。