ろくでなし啄木
昔はすごく三谷舞台が好きだったのだけど、いつの頃からかなんだか素直に楽しめなくなり、ここ数年はちょっと遠ざかり気味。しかも3人芝居の役者3人とも別に興味がない・・というわけで過度の期待をせずに見たのですが、意外にも面白かったです。
ある関係の3人の男女のある一夜の出来事を、時を巻き戻すように、3人それぞれの視点から再現するという形態。2重とも3重ともなるストーリーの構造が面白かった。特に2人目の（観客はここで初めてさっきまでのシチュエーションを別の見方で見るとこんなにも違うんだーって気付くのです。）テツの記憶の部分ではワクワクしました。（障子の開閉によって、向かい同士の部屋のあっちになったりこっちになったりという発想も素晴らしい。）
ところが、3人目、肝心の啄木の部分がとってつけたようでなんだか陳腐。せっかく素晴らしいテンポで進んできたのに、3幕で流れが急に止まってしまった感がヒジョーに残念。ここにきて冗長で退屈・・。3幕目、いらなかったんじゃないかなーとか、思っちゃったんですが。まぁ啄木に見せ場を作らないとという大人の事情なのだろうな・・なんて冷めたこと考えてしまいました。それでも面白かったんですけどね。
そしてテツ役の勘太郎さん、なるほどこれが歌舞伎役者の芸の力かと、圧倒されました。まさに芸達者。彼の骨太で巧みな演技に芝居全体が引っ張られていった感じ。1人、突き抜けてました。（しかしまったく“エロティック”ではないですよね。なぜそれを宣伝文句にしたのか・・）
