茫洋茫洋

で、今度は映画人間失格の中也の話。(ネタバレあり)
手放しで褒めます。剛くんいいです。素晴らしいです。(贔屓目?ですか?)

まずは文壇バーでの荒くれ中也。目深に被った帽子に無精ひげ。何かとてつもなく大きなものに抗ってもがいているような荒んだ雰囲気が、なぜかしらなんとも切ないです。
その後、古書店で葉蔵と再会したときの中也は、一転とても優しい空気を纏っていて。それはまるで、抗うことを諦め、すべてを受け入れたような平安と一抹の淋しさも感じられ・・。
この映画での中也の役割は、葉蔵を死へと誘うのではなく、生への執着というか、憧憬を思い起こさせたのではないかなーと。自分が諦めなければならなかったもの、それをその手に持っている葉蔵に啓蒙していたのではないだろうか。
そして葉蔵にとってそんな中也は、汚らわしい世俗の中で、唯一の幻想的で儚い一条の光だったのだなーと。
走馬灯のようなラストの汽車のシーン。「茫洋茫洋」と桜(海棠?)の大枝を手に威風堂々と通路を歩く中也の姿が感慨深かった・・。