「ゼアウィルビーブラッド」を観た(絶賛)

去年から観たい観たいと言い続けてた「ゼアウィルビーブラッド」を観ました。PTA監督作品です。
おもしろかった。見ごたえのあるいい映画だった。最後のシーンでさすがPTA!と唸らされた。見終わった途端もう一回観たいと思った。今のところ今年NO1です、ワタシの中で。以下、ネタバレ。

ストーリーは極めてシンプル。何かに突き動かされるように石油発掘でより多くの富を得ることだけを生きる糧とする男(oil man)の話。主人公ダニエルの巧みな交渉にやすやすと乗ってしまう映画の中の気のいい田舎者たちのように、見ているワタシも彼が善人なのか否か判断つけかねるまま、ストーリーに引き込まれる。その後、彼の貪欲なまでの石油にかける情熱を見るにつけ、段々とその頑なで冷酷な言動に気づき始めるのだけれど・・。彼は自分のことを愛する者、赦す者もすべて信じることができず、拒絶して生きている。他人を徹底的に傷つけたり、かと思えば偽の兄弟をたやすく信じてしまったり。実はそれは愛と無縁(と思い込んでいる)の彼の劣等感の表れなのかも。自信の無さの裏打ちなのかもなー。ビジネスは成功を遂げるけれど、晩年の彼は幸せとは程遠い姿でひとりぽっち(・・と書くとありがちな映画を想像しちゃうけど、一味も二味も違うんですが、それがPTAクォリティー。)。
牧師イーライ(彼もまた、対象は違えどダニエルのように狂信的にひとつのものを追い求めた末の再会)を辱め、失意の彼を撲殺した挙げ句の最後のセリフで、PTAすげぇーと思わずのけぞった。鳥肌立ちました。ラストに近づくにつれて、このタイトルの持つ(いくつもの)意味が明らかになってきます。いやー。期待を裏切らないおもしろさだった。いい映画を観た。
冒頭数分は全くセリフがなく、ただひとり大自然と格闘し続ける若き日のダニエルの姿にあっという間に引き込まれてしまう。映画全体を通して音楽が常に不安感を煽り続け、ハッピーエンドに向かわないであろうことを見るものに予測させる。また、シーンの変わり目に次のシーンの音だけが前のシーンの映像に被る演出が多々あるのだけれど、それが(決して幸せではないであろう)未来を暗示させるのにひじょーに効果的。とにかく演出の手腕が見事!無駄がない。さすがPTA、さすが天才!ワタシ的に言わせてもらえば、監督賞はこっちだったなーと思ったよ。