ブエノスアイレス午前零時 感想

やっと感想。(ネタバレあるかも)
複数回観劇すると、大抵感想も徐々に変わってくるのですが、今回に関しては、初見の印象が一番的確にこの作品を表していたかなと。
原作からの膨らませ具合、2つの世界の絶妙なリンク、それぞれの世界の交錯の仕方が秀逸。これに尽きます。膨らませた部分は結構ベタだったりするんですが。二役となるそれぞれのキャラクターの重なり具合も素晴らしかった。"隠れてる"カザマと自分をいないことにするのに耐えられないニコラス。真逆のようで、心の奥底で燻る想いは同じと感じさせる設定は秀逸でした。
ねらってかどうかわかりませんが、劇場の奥行を敢えて平面的に見えるように使っている感じの演出。ステージのある場所にフレーム(映画館のスクリーンだったりTVの枠だったり)のようなものを設定して、その中に納まる場面を作り上げる(ボカの酒場だったり、ホテルのロビーだったり)。その出来上がった場面の中に誘われるように入っていくカザマ(ニコラス)。その場面は奥の方からずずずーーっとフレームの位置に押し出されてくるわけです。奥行をこうやって使うっていうのがなるほどって感じです。カザマ以外の人達はみんなそれぞれの世界の衣装で場面の一部となってフレームに納まっていて、カザマと老ミツコだけが行き来する。映像畑の人だけに、そういう感覚の演出なのかなーと思ったりもしました。それがこの芝居を貫くちょっと不思議で幻想的な雰囲気を作り上げてると思うのだけど、別の見方をすればちょっと平面的で、舞台ならではの起伏が足りないと思わせるのかも。
それとボカの酒場シーンとか、もっと淫靡で猥雑な感じでもいいのになーと思ったのですが。その辺りも演出家の、品というか、趣向なのかなー。
役者陣はそれぞれハマってました。剛くん、千葉さんはもう散々書いたんで、割愛。原田さんはさすがの存在感。伊達さんは地方のちょっとヒネた感じの青年がよく似合う。瀧本さん、今回の舞台まで全く存じ上げず、且つ今作の会見なんかでの幼稚な話し方を聞いて、かなり不安視していましたが、蓋を開けてみれば声も通るし、ダンスも魅せるし、凛とした美しさでマリアにぴったりでした。舞台向きな方だなーと(映像での彼女を見たことないんですが・・)。
あと、音楽が良かったです。カザマがニコラスに変わる瞬間の「ブエノスアイレス午前零時」はゾクゾクしました。
DVD化、期待できそうですが、音楽そのまま使えるんですかね?そのままであってほしいです。あの曲で妖しい空気へと一変するのが素晴らしかったんで。