「ライ麦畑でつかまえて」

夏になると名作が読みたくなる・・と毎年言ってますが、おそらく小学校時代の刷り込みだと思われます。(しかも読書感想文を書きたくなる・・。)そんなわけで久々に不朽の名作「ライ麦畑でつかまえて」を読んでみました。(野崎訳の方です。)
16歳の頃のワタシの心のバイブルは「コインロッカーベイビーズ」と、この「ライ麦畑でつかまえて」でした。まったく毛色の違う2冊ですが、当時のワタシ的には同じ意味というか同じエネルギーを持った本で。その頃何度も読み返してはそのたびにずしっと圧し掛かる想いを噛みしめていたのでした。
今、大人になって読むと(他のほとんどの小説にもいえることだけど)、あの頃抱いた気持ちとは違う客観的な見かたができるようになってて。十代のあの頃は単純に、“世の中(大人)=汚いもの”、“ホールデン(矢面に立つ子供代表)=無垢でキレイなもの、世の中に必死に抗う存在”の構図と受け取って、ひたすらにホールデンに感情移入していたのだけど。
今、大人のワタシから見るホールデンはひたすら痛々しい。同情するほどに。彼のあんな感情もそんな言動も、決して突飛ではなくものすごく説得力を持っていて、それはきっとその時のホールデンにはわからないけど、彼の忌み嫌う大人には(全員ではないにせよ)ちゃーんとわかってるのに。それなのに自他を否定し責め拒み蔑み後悔し、時に媚び慕い、そんな彼の全ての想いが、言動が頑なすぎて(時に素直すぎて)、なんとも痛々しくて・・。なんとかこの少年に幸せになってもらいたいなーんて思ってしまったのでした。
読み手が子供視点だと、反骨精神旺盛の若者のための対社会のバイブル的な本に思えるけど、その実同時に、大人が書いた、大人が優しい目で若者を見守る話でもあるのだなーと。大人になって初めて思いました。