「その土曜日、7時58分」をその土曜日に観る

今日、恵比寿ガーデンシネマで観ました。以下ネタバレあり。

シドニールメットといえば社会派硬派な作品のイメージで、あまり好みではないのだけど、この作品は大好きなフィリップ・シーモア・ホフマンマリサ・トメイ(唯一好きな女優です)とワタシのお気に入り俳優が名前を連ねていたので観たかったんです。
冒頭、何の説明も無しに描かれる宝石店強盗が、その後登場人物たちの時間を事件前後に戻すことで、ひとつひとつ事件の状況が明らかになっていく。同時に彼らが事件に関わるまでのいきさつ、置かれた立場、困窮した暮らし、絶望的な人生までもが見事に描かれていくあたりがさすが大ベテラン監督という感じ。ありふれたクライムサスペンスかと思いきや、一貫して重厚な感じ、静寂の中に緊張感が溢れ、何度も繰り返される同じ時を飽きることなく固唾を呑んで見守ってしまった。
事件に至る全貌が見えてくると、それはどこかギリシャ神話の悲劇を思わせるストーリーで。
兄アンディが父に愛されなかったというやりきれない想いを抱えて生きてきたこと、それこそがこの家族が晒された一連の悲劇の発端なのだろーなー。愛されたいのに愛されない。愛したいのに愛せない。赦せない、赦さない、赦されない。
そんな想いが悲劇の種を蒔き、悲劇の連鎖を呼んだということか。哀しいっ。そしてその悲劇の一端は父にもあり(いや、愛されたいと願って凶行に及ぶより、「愛せない」方がある意味罪深いのかもしれない・・)、おそらくそれは彼にもわかっているのだろうに、悲劇の連鎖を断ち切れない父の姿がまた哀しいのです・・。
それにしても。あー、重い。重くて暗い。役者の芝居は最高だし、しっかり丁寧に作られた映画で、見る人によっては最高点をつけるのもわかるいい映画です。でも、ワタシ向きではなかった。2H弱なんだけど3Hくらい観た疲労感。今日は体調万全じゃないのもあってちょっときつかったー。