「インランドエンパイア」見ました!!

CINE CITTAにて。レイトショーで見ました。ちっちゃいシアターにやや不満だったのだけど、始まってみたら、なんだか小屋のなかにいるっぽい感じが映画に合っていてさらに怖さを引き立ててくれました(しかもがらがらだったから)。そしてこの映画はレイトショーで見るべきだ!!絶対。ほんと終わってからも余韻が楽しめることうけあい。というわけで以下感想。

難解とうたわれた前作「マルホランドドライブ」をかるーく超える難解さ。この映画はむりやりわかろうとせず、素直に感じて、それに対して自分がどういう反応をするのか自分で楽しむのがよいですね。きっと正解はリンチ以外誰にもわからないし、自分なりの解釈で優越感や矛盾を楽しんで。
 一見幸福に見える豊かな生活、地に落ちた生活、作られた虚構の世界、どこかの誰かの暗い過去、善悪の決着、文字通りさまざまな世界が交錯し、人間のあらゆる負の感情をむき出しにしてそういうものと向き合ったり、決別したり。すれ違ったり、組み合わさったり、追いかけられたり。
今、一体いつの誰のどこの世界を見ているのか、あっという間にわからなくなり、必死に辿っても更にわからなくなり、いつしか考えることをやめ、そのわからなさを味わうのが快感だったりするわけです。
始まってすぐリンチの仕掛けた迷宮に入り込み、得体の知れない不安感に、無意識のうちに視覚や聴覚だけじゃない色んな感覚が研ぎ澄まされ緊張感たっぷりで見続けた感じ。3時間も。でもフシギとまったく長く感じなかった。映画の中で時間軸がめちゃめちゃな(主人公が最近時間の感覚がおかしくなって物事の起こった順番がわからない・・と言うシーンあり)ためか、見ているこっちの時間感覚も麻痺してきて、始まってからどのくらいの時間がたったのかまーったくわからなくなる。で、まだまだ終わらないでーって思う。この非日常の感覚にずーっと浸かっていたいーと。
思わせぶりな映像の数々、怪しげな人物の意味ありげなセリフの応酬に、ついこの不可解な謎だらけのストーリー解明の糸口を探してしまう(きっと無駄なのに)。そしてこの映画には(特に物語前半には)見ている人にそういうこと考えさせるシンキングタイムを与えているかのように空白の時間の多いこと。各所に散りばめられている。これもリンチの作戦ではないかなー。で、まんまとはまって色んなことを考えちゃうわけです。きっとあれは何かを暗示してるにちがいないとか、このセリフは何か意味があるだろうとか。そんなんであっさり解明するわけはないけど、頭の中で渦巻いていたキーワードがパズルがはまるようにぴたっとハマる瞬間があって、ひとり優越感と言うか、客席でひざをぽんと叩きたくなるような部分的解決みたいなものも用意されていて。
とにかくリンチマジック。不可解でも怖くても長くても、ホント楽しいんです。そしてリンチの作品には恐怖の中に希望が見える瞬間があって(死を前に赦されるというか)それにすごく優しさとか救いを感じる。
あと一回は映画館に見にいこう。そしてDVD出たら買おう。マルホランドドライブもそうだけど、何度も見たくなる中毒性があるんだよ。しかもインランドエンパイアは時間が経ってからじわじわくるよー。