「イングロリアス・バスターズ」

タランティーノ最新作「イングロリアス・バスターズ」を観てきました。
タランティーノ好きなんですけど、最近の作品はマニア度が高すぎてちょっと・・という感じだった上、タランティーノが戦争映画???とあまり期待せずに見たのだけど、今作はおもしろかった。正直もう一回見たいです。(以下、ネタバレあり)

物語の始まりは第2次世界大戦下のフランス。ナチに迫害されるユダヤ人。ナチの横行を止めるために秘密裏に結成されたブラピ率いるアメリカ軍“イングロリアス・バスターズ”。ナチへの復讐を企てる人々。裏切り、寝返る人達。それぞれの思惑と偶然と嘘と真実が入り乱れて・・。
いつものタランティーノ作品のように台詞の応酬。それがさらに今作ではフランス語・ドイツ語・英語・イタリア語が飛び交う。しかも、そのシーンでその言語であることがキーになることが多々あって、まったく気が抜けない。
確かに戦争映画ではあるのだけれども、戦闘シーンだの、緻密な作戦だのほぼ出てこない。ナチの主要人物を一掃するという最終的な計画も、ドイツのプロパガンダ映画のプレミアに集まる彼らを映画館ごと爆破してしまおうという奇想天外なものだし。
フランスを舞台にフランス語・ドイツ語飛び交う始まりだからか、アメリカの戦争映画にありがちな正義のアメリカが大義の下に制裁を行なうという構図にはならず、“イングロリアス・バスターズ”もナチと同じくらい狂気に満ち満ちたテロ集団に見えて。
タランティーノ作品ではお馴染みの光景、あっけなく、ばたばたと人が殺されていく、バイオレンスめいっぱいの映画なのだけど・・。ふと気付く。ドイツ軍のプロパガンダ映画の中のドイツ兵。一人で300人の敵を殺し、英雄と讃えられている。・・・一緒だよなー。戦争映画で大義を振りかざして人殺すのと。どちらも狂気に満ち溢れてる。タランティーノは決してそんなこと言わないだろうけど、つまりそういうことだよなーと。
ブラッドピットの狂気溢れる妙な貫禄というか、豪胆な感じがよかった。単純ではない、入り乱れるストーリーの展開のおもしろさに、2時間半があっという間でした。