Into the wild

wowowで早くも放送の「イントゥ・ザ・ワイルド」を見ました。
現代社会や自分を取り巻く恵まれた環境から、何よりも両親から、逃げるように北へと向かう青年。裕福で、十分な教育も、それに見合う知性も兼ね備えた彼が、こんな世の中に絶望して死に急ぐのか、死に場所を探すためにアラスカを選んだのか、世捨て人として生きながらひっそりと死を待つのか・・。恵まれた境遇で育ったゆえの、世間知らずであたまでっかちな若者の甘えにも似た現実逃避の話かと思いきや、実は生命力に満ち満ちた、生きるための放浪の軌跡の物語で。
主人公クリスの哲学的な物事の見方、詩的な表現の仕方、そして大自然。ちっぽけな人間が大自然に抗うでもなく、ただそこに含まれる素晴らしさ。それだけで心に訴えてくる映画です。ショーンペンは役者としてだけでなく監督としても素晴らしいのかもしれない・・。
クリスがアラスカの地を目指すに至った2年間の放浪生活で出逢う様々な人達。それぞれに痛みを抱えてそれでも人を愛し、赦し、幸せを分かち合って。
でもやはり。若きクリスが今出来ることは不器用だけれどああやって一人で、勝てるはずの無い大自然に向かうことで。そして幸せは分かち合う人がいてこそ、幸せなのだと気付き。自分がもしも赦すことができなかった人を赦し、愛することができたなら、今この最期のときの神からの至福を得られることができただろうかと自らに問い。最期に自分の人生は幸せだったと大声で言える幸せ。こういう生き方もいいなとか思っちゃうほどに。
監督ショーンペンは、キレイごとを貫いて死ぬためではなく生きるために無謀ともいえる挑戦をするこの愛すべき青すぎる若者を、優しく愛情溢れる目で見守っている。それがこの映画の勝因というか、見るものをなんだか温かい気持ちにしてくれるんだろうなー。いい映画です。